私は知っている
いるべき場所にいることの安心を
変えようとして変わらないことの苛立ちを
遅れてきた世代の私には、立ち向かうべき
相手がつかめない
あったことが無いことになり、
無いことがあったようにいわれ
歴史は繰り返すのか
安逸の中で、知らぬ間に手を
血で染めてしまう臆病さに、おののいた
風車に立ち向かった、かのスペインの
騎士のように、小心者の私には、巨人に
臨もうとする狂気は
どこから来るのか知らない
私は知らない
流された血が、時と場所により、
そんなにも重さが違うことを
私は知っている
失われた血と失われた命が天秤で
量られて捨てられていることを
私は知らない
倒れた人たちの夢を、求めたものを
私は想っている
この国からなくなろうとしているものが
なになのかを
基礎科コース講師・西村 幸生
作品:「何処へⅢ」 S50号